社会を変革する映画正義の味方=Iはねこは、小菅や綾瀬から、ずいぶん面会に通ったものでした。東拘のジョン・ローンと呼ばれる2枚目(昔は五木寛之と呼ばれていた)は自意識過剰に髪をかきあげるし、油ギッシュな「テロリスト」はいるし、永田洋子さんからは30分間びっしり、病状を聞き続けて・・と、いろいろありました。が、その拘置所がハイテク・ビルに建て替えられます。反対運動もあったのですが、そんなことみんな知らないよね、多分。
「秋のドイツ」という映画がありました。「バーダー・マインホフ・グルッペ」(西ドイツ赤軍というふうに、警察・マスコミでは言われる)のメンバーが獄中で自殺するという事件があったのですが、妹の死因に疑問を持った女性が「真相」を探るという、事実に基づいた映画です。
当時、西ドイツには死刑制度がなかったのですが、代わりに、自殺を装った獄中殺人が行なわれているのではないかという疑問が、この映画の背景としてありました。
「自殺した」妹の遺体は教会墓地での埋葬を拒否され、仕出屋からは料理の提供を拒否されます。へ〜え、ドイツでも日本と同じように一席設けるのね、と感心していたのもつかの間、美しく緑輝く墓地のはずれにようやく埋葬された「妹」の棺と、それを囲む粗末なトタンを見たとたん、うるうるときてしまいました。静かに静かに流れるバッハ「G線上のアリア」。あの曲を耳にするたびに思い出す1シーンです。
Iはねこ(1997年4月17日)
「刑務所映画」というと最近の『スリーパーズ』にいたるまで世にたくさんあって、例えば『クライベイビー』の能天気な刑務所シーン(囚人はジョニー・デップ、看守はウィレム・デフォーだ!まいったか!)は、エルヴィス・プレスリーの『監獄ロック』とそれをパロった『プルースブラザーズ』にも匹敵するかもしれません。
しかし死刑にまつわる映画というと、やはりティム・ロビンスの『デッドマン・ウォーキング』と、イタリア映画(ジャンニ・アメリオ監督)の『宣告』は忘れてはなりませんぞ。前者では死刑囚のショーン・ペンが官能的なまでに美しかったし、後者ではジャン=マリア・ヴォロンテ(マカロニウエスタンの悪役としても有名だけど、『サッコとヴァンゼッティ』で、無実の罪を着せられる左翼活動家の役もやってます)の年とって枯れた、しかし色っぽい風情がなんともよかった。映像も実に力強かったし。
死刑映画といっても声高に「死刑廃止!」を叫ぶわけではありません。そんなふうにメッセージを伝えようとする映画ではないのだけれど、死刑とはいったい何か?ってことをそれぞれのやりかたで映像に定着させた映画だと思います。
jaja(1997年4月20日)